FAカップ:下部リーグのチーム、1部との対戦の約5分の1で勝つ
イングランド、ドイツ、フランス、イタリアの4つのカップ戦(負けた側が敗退する大会)で、下部リーグのチームが1部のチームを破る割合は、大会どうしで近い。


イングランドのFAカップでは、2005年から2026年にかけて、下部リーグのチームが、いちばん上のレベルである1部のチームを破った。その割合は、1部のチームとの対戦のおよそ5分の1だ。この大会には、国内のさまざまなレベルのチームが同じトーナメントで出場する。だから、1部のチームと下部リーグのチームが当たる。対戦ごとに、負けた側が敗退する。
どのカップ戦で、ジャイアントキリング(番狂わせ)、つまり下部リーグのチームが1部のチームを破る対戦がいちばん多いのか。突出した大会はない。ドイツのDFBポカール、フランスのクープ・ドゥ・フランス、イタリアのコッパ・イタリアの割合もFAカップに近く、大会どうしの差は偶然かもしれない。FAカップで下部リーグのチームが1部を破った対戦のなかには、マックルズフィールドが前回王者のクリスタル・パレスを破った試合がある。
以下では、カップ戦ごとの集計と、2部とそれより下の部のチームが1部を破った回数を示す。そのあと、下部リーグのチームが、有利だと見られがちな自分たちのスタジアム、つまりホームで戦った回数を見る。対戦のデータは、Soccer Addictedが保存している試合のデータベース(アーカイブ)のものだ。スペインのコパ・デル・レイとコパ・ド・ブラジルは、このデータベースにないため対象外とした。
集計の方法:4つのカップ戦、2,204対戦
1つの対戦は、1回だけ数える。ホーム・アンド・アウェー方式でも、引き分けのあとの再試合(リプレイ)があっても同じだ。2024-25シーズン以降、FAカップは、この集計が使うラウンドでリプレイを行わない。破るとは、次のラウンドに進むことだ。同じカップ戦の次のラウンドに名前が出たチームを数え、延長戦とPK戦も含める。
各チームは、そのカップ戦のシーズンに所属していた部で集計に入る。1部は、プレミアリーグ、ブンデスリーガ、リーグ・アン、セリエAで、2部は、EFLチャンピオンシップ、2. ブンデスリーガ、リーグ・ドゥ、セリエBだ。アーカイブには3部とそれより下の部がないため、「3部以下」は、3部、4部、それより下の部をまとめたもので、分けていない。
アーカイブには、2024年の1〜6月のデータがない。そのため、FAカップとクープ・ドゥ・フランスでは2023-24シーズンを外した。DFBポカールとコッパ・イタリアでは、2023年12月より後のデータを外した。進行中の2026-27シーズンも対象外だ。計算した日は、2026年10月9日である。
ほかにも小さな欠けがある。アーカイブには、FAカップ2011-12シーズンの3回戦と、クープ・ドゥ・フランス2007-08シーズンの、1部のチームが入る最初のラウンドがない。2017-18シーズンは、そのラウンドの32試合のうち9試合しかない。FAカップ2005-06シーズンの11対戦は、スコアがないため集計から外した。そのため、これらのシーズンは表の対戦数が少なくなっている。
2,204対戦のうち、2,126対戦は、スコアと次のラウンドの結果を比べられる。2,125対戦では、2つが同じチームを指している。例外は、DFBポカール2021-22シーズン1回戦の、ヴォルフスブルク対プロイセン・ミュンスターだ。ヴォルフスブルクが延長戦で3-1と勝った。しかし、ドイツサッカー連盟(DFB)のスポーツ裁判所は、ヴォルフスブルクの監督が交代を1回多く行ったとして、ミュンスターに2-0の勝利を認めた。アーカイブは次のラウンドに従い、そこにはミュンスターが出てくる。
1部のチームを最も多く破るのはどのカップ戦か:突出した大会はない
突出したカップ戦はない。割合がいちばん高いのはクープ・ドゥ・フランスの24.0%、いちばん低いのはFAカップの19.5%だ。割合とは、下部リーグのチームが勝ち上がった対戦の比率のことである。表には、その隣に95%信頼区間を載せた。これは、そのカップ戦の対戦数から見て、割合がおそらく収まる範囲のことだ。
| カップ戦の国 | 対戦数 | 下部リーグのチームが破った数 | 割合 | 95%信頼区間 |
|---|---|---|---|---|
| イングランド(FAカップ) | 538 | 105 | 19.5% | 16.4%〜23.1% |
| ドイツ(DFBポカール) | 695 | 139 | 20.0% | 17.2%〜23.1% |
| フランス(クープ・ドゥ・フランス) | 554 | 133 | 24.0% | 20.6%〜27.7% |
| イタリア(コッパ・イタリア) | 417 | 90 | 21.6% | 17.9%〜25.8% |
| 4大会の合計 | 2,204 | 467 | 21.2% | 19.5%〜22.9% |
ここから読み取れること:4つの信頼区間は重なっていて、すべてに共通するのは20.6%〜23.1%の区間だ。推論:カップ戦どうしは、評判が言うよりも似ている。
統計的な検定でも同じ結果になる。4つのカップ戦の割合が同じだったとしても、これくらいの差は、100回のうち約24回は偶然に出る(p = 0.24)。いちばん離れた組み合わせ、FAカップとクープ・ドゥ・フランスでも、はっきりした差とは言えない(p = 0.079)。
4つのカップ戦を合計すると、カップ戦よりも下部リーグのチームが属する部のほうが数字を分けている
4つのカップ戦を合計すると、2部のチームが1部のチームを破ったのは、1,109対戦のうち276対戦(24.9%)で、4回に1回ほどだ。3部以下のチームは、1,095対戦のうち191対戦(17.4%)で、6回に1回を少し上回る。信頼区間は重ならない。22.4%〜27.5%に対して、15.3%〜19.8%だ。筆者の見方では、数字をいちばん分けているのは下部リーグのチームが属する部である。ただし、カップ戦ごとに見ると様子は変わり、イングランドでは部の違いはほとんど数字を分けていない。
| カップ戦の国 | 2部対1部 | 3部以下対1部 |
|---|---|---|
| イングランド | 317対戦中62回(19.6%) | 221対戦中43回(19.5%) |
| ドイツ | 277対戦中75回(27.1%) | 418対戦中64回(15.3%) |
| フランス | 192対戦中67回(34.9%) | 362対戦中66回(18.2%) |
| イタリア | 323対戦中72回(22.3%) | 94対戦中18回(19.1%) |
| 4大会の合計 | 1,109対戦中276回(24.9%) | 1,095対戦中191回(17.4%) |
ここから読み取れること:ドイツ、フランス、イタリアでは、2部のチームのほうが3部以下のチームより多く破っている。イングランドでは、2つはほぼ同じで、19.6%と19.5%だ。推論:FAカップは、部による違いという傾向の例外であり、イタリアは3部以下が94対戦しかなく、差は不確かである。
3部以下のグループの例が、マックルズフィールドだ。2026年1月10日、3回戦で、クリスタル・パレスを2-1で破った。3回戦は、プレミアリーグのクラブがカップ戦に初めて出るラウンドである。クリスタル・パレスは前回王者で、マックルズフィールドは、CBSスポーツによると、イングランドの上から4つの部に入っていないクラブだ。この対戦は、アーカイブにある期間で、プレミアリーグのクラブを3部以下のチームが破った43対戦の1つである。
クープ・ドゥ・フランスには、手がかりがある。2部のチームがリーグ・アンのチームを破ったのは、192対戦のうち67対戦(34.9%)で、3回に1回を超える。ただし、アーカイブはこれをまだ証明していない。数字を見たあとで切り口を選んだからで、こうした切り口は結果を大きく見せることがある。
ホームで戦うのはどちらか:部と混ざらずに比べられるのはFAカップだけ
ホームとアウェーを部と混ぜずに比べられるのは、FAカップだけだ。準決勝と決勝を除くと、下部リーグのチームが1試合目をホームで戦ったのは、530対戦のうち278対戦(52%)である。ホームで戦うのは有利だと見られがちだが、割合は両方で同じだった。ホームは19.8%(278対戦中55回)、アウェーも19.8%(252対戦中50回)だ。
| カップ戦の国 | 数えた対象(準決勝と決勝を除く) | 下部リーグのチームがホームだった回数 |
|---|---|---|
| イングランド | 各対戦の1試合目 | 530対戦中278回(52%) |
| ドイツ | 3部以下のクラブが相手の、1試合で決まる対戦 | 413対戦中413回(100%) |
| フランス | 3部以下のクラブが相手の、1試合で決まる対戦 | 353対戦中323回(91.5%) |
| イタリア | 1試合で決まる対戦 | 404対戦中66回(16.3%) |
ここから読み取れること:下部リーグのチームがホームだったのは、イングランドでは52%、イタリアでは16.3%で、3部以下のチームが相手の対戦では、ドイツで100%、フランスで91.5%だった。推論:下部リーグのチームがホームで戦う割合が半分に近いのはイングランドだけで、だからホームとアウェーを部と混ぜずに比べられるのもイングランドだけである。
ほかの3つのカップ戦では、ホームで戦ったかどうかが、下部リーグのチームが属する部と一緒に動いていて、集計ではそれを分けられない。アーカイブが示すのは、どのチームがホームだったかであり、その理由ではない。ドイツでは、3部以下のチームは、1試合で決まる413対戦のすべてでホームだった。勝ち上がったのは15.3%で、4つのカップ戦のこのグループのなかでいちばん低い。このグループでのカップ戦どうしの差は、偶然かもしれない(p = 0.51)。
時間がたつと減ったのか:2つの時期の幅は重なる
ジャイアントキリングは減っていると聞いたことがあっても、集計はそれを裏づけない。2005-06〜2014-15シーズンと2015-16〜2025-26シーズンの2つの時期で同じ計算をすると、後の時期は、イングランド、ドイツ、フランスで割合が低い。イタリアはほぼ同じだ(21.2%と22.0%)。ただし、どのカップ戦でも、2つの時期の信頼区間は重なっている。表のとおりだ。
| カップ戦の国 | 2005-06〜2014-15シーズン | 95%信頼区間 | 2015-16〜2025-26シーズン | 95%信頼区間 |
|---|---|---|---|---|
| イングランド | 20.8%(255対戦中53回) | 16.3%〜26.2% | 18.4%(283対戦中52回) | 14.3%〜23.3% |
| ドイツ | 22.1%(349対戦中77回) | 18.0%〜26.7% | 17.9%(346対戦中62回) | 14.2%〜22.3% |
| フランス | 27.1%(284対戦中77回) | 22.3%〜32.6% | 20.7%(270対戦中56回) | 16.3%〜26.0% |
| イタリア | 21.2%(208対戦中44回) | 16.2%〜27.2% | 22.0%(209対戦中46回) | 16.9%〜28.1% |
ここから読み取れること:フランスは27.1%から20.7%へ、ドイツは22.1%から17.9%へ下がったが、2つの時期の信頼区間は、4つのカップ戦すべてで重なる。推論:アーカイブからは、ジャイアントキリングが減ったとも、増えたとも言えない。
シーズンごとに見ると、標本は小さい。どのカップ戦も、年に10〜38対戦しかない。各セルは、下部リーグのチームが勝ち上がった回数を、対戦数とあわせて示す。21対戦中3回は、21対戦のうち3回勝ち上がったという意味だ。
| シーズン | イングランド | ドイツ | フランス | イタリア |
|---|---|---|---|---|
| 2005-06 | 21対戦中3回 | 32対戦中6回 | 28対戦中6回 | 30対戦中7回 |
| 2006-07 | 24対戦中3回 | 35対戦中8回 | 32対戦中7回 | 34対戦中9回 |
| 2007-08 | 25対戦中10回 | 35対戦中8回 | 13対戦中5回 | 10対戦中2回 |
| 2008-09 | 30対戦中5回 | 33対戦中5回 | 26対戦中7回 | 19対戦中4回 |
| 2009-10 | 29対戦中5回 | 38対戦中10回 | 32対戦中7回 | 21対戦中6回 |
| 2010-11 | 30対戦中5回 | 38対戦中10回 | 34対戦中13回 | 17対戦中1回 |
| 2011-12 | 12対戦中2回 | 35対戦中7回 | 34対戦中10回 | 19対戦中3回 |
| 2012-13 | 29対戦中8回 | 33対戦中7回 | 32対戦中6回 | 20対戦中4回 |
| 2013-14 | 26対戦中6回 | 34対戦中7回 | 30対戦中9回 | 20対戦中6回 |
| 2014-15 | 29対戦中6回 | 36対戦中9回 | 23対戦中7回 | 18対戦中2回 |
| 2015-16 | 24対戦中2回 | 30対戦中5回 | 32対戦中6回 | 22対戦中8回 |
| 2016-17 | 31対戦中8回 | 33対戦中6回 | 23対戦中3回 | 21対戦中5回 |
| 2017-18 | 29対戦中5回 | 29対戦中2回 | 12対戦中4回 | 20対戦中4回 |
| 2018-19 | 28対戦中7回 | 31対戦中5回 | 29対戦中6回 | 19対戦中5回 |
| 2019-20 | 30対戦中5回 | 31対戦中4回 | 33対戦中6回 | 18対戦中3回 |
| 2020-21 | 28対戦中3回 | 35対戦中8回 | 23対戦中6回 | 17対戦中3回 |
| 2021-22 | 29対戦中6回 | 32対戦中7回 | 30対戦中7回 | 18対戦中2回 |
| 2022-23 | 25対戦中7回 | 33対戦中5回 | 29対戦中6回 | 19対戦中5回 |
| 2023-24(2023年12月まで) | - | 26対戦中9回 | - | 16対戦中3回 |
| 2024-25 | 29対戦中3回 | 35対戦中7回 | 31対戦中9回 | 21対戦中6回 |
| 2025-26 | 30対戦中6回 | 31対戦中4回 | 28対戦中3回 | 18対戦中2回 |
ここから読み取れること:シーズンが変わると、イングランドは2006-07シーズンの24対戦中3回から、2007-08シーズンの25対戦中10回へ変わり、イタリアは2010-11シーズンに17対戦中1回だけだった。推論:1年の対戦数がこれだけ少ないと、パターンが見えるのは、多くのシーズンを合計したときだけである。
残る3つの数字
覚えておくのは3つの数字である。4つのカップ戦で、下部リーグのチームが勝ち上がったのは、約5回に1回(21.2%)だった。2部のチームなら約4回に1回(24.9%)で、3部以下のチームなら6回に1回を少し上回る(17.4%)。これは2005-06〜2025-26シーズンの記録であり、どの試合の予測でもない。
筆者の見方では、いちばん強いデータは、カップ戦の間に差がないことであり、どれか1つの大会の割合ではない。心に残る場面は、2026年1月10日だ。マックルズフィールドが前回王者を破った。集計が記録した467の敗退の1つである。
- Football365: FA Cup replays scrapped by Football Association in response to 'expansion' of UEFA… (新しいタブで開きます)
- CBS Sports: FA Cup takeways: Reigning champs Crystal Palace shocked by non-league side; Man City… (新しいタブで開きます)
- Capital FM: Wolfsburg appeal after being thrown out of German Cup over subs mix up (新しいタブで開きます)
よくある質問
- 下部リーグのチームが1部のチームを最も多く破るカップ戦はどれか?
- 突出したカップ戦はない。Soccer Addictedのアーカイブでは、2005-06〜2025-26シーズン(2023-24シーズンは一部のみ)に、下部リーグのチームが1部のチームを破ったのは、イングランド、ドイツ、フランス、イタリアのカップ戦で2,204対戦のうち467対戦(21.2%)だった。カップ戦ごとの割合は19.5%〜24.0%で、差は偶然かもしれない(p = 0.24)。
- FAカップで、下部リーグのチームがプレミアリーグのチームを破る回数は?
- Soccer Addictedのアーカイブでは、2005-06〜2025-26シーズン(2023-24を除く)で、538対戦のうち105対戦(19.5%)、約5回に1回である。信頼区間は16.4%〜23.1%だ。2026年1月10日には、マックルズフィールドが3回戦でクリスタル・パレスを2-1で破った。
- カップ戦でホームで戦うのは、下部リーグのチームか、1部のチームか?
- カップ戦による。Soccer Addictedのアーカイブでは、下部リーグのチームがホームだったのは、イングランドが530対戦のうち278対戦(52%)、ドイツが413対戦中413回、フランスが3部以下のチームが相手の353対戦中323回で、イタリアは404対戦中66回(16.3%)だ。
- 2部のチームは、3部以下のチームより多く1部を破るのか?
- 全体ではそうだ。4つのカップ戦では、2005-06〜2025-26シーズン(2023-24シーズンは一部のみ)のアーカイブで、2部のチームが24.9%(1,109対戦中276回)、3部以下のチームが17.4%(1,095対戦中191回)だった。FAカップでは違い、19.6%と19.5%だ。
- カップ戦のジャイアントキリングは減っているのか?
- Soccer Addictedのアーカイブからは、そうとは言えない。2015-16〜2025-26シーズンの割合は、2005-06〜2014-15シーズンより、イングランド、ドイツ、フランスで低く(フランスは27.1%から20.7%)、イタリアではほぼ同じだが、どのカップ戦でも2つの時期の信頼区間は重なっている。
- 2025-26シーズンのFAカップで、前回王者のクリスタル・パレスを破ったのは?
- マックルズフィールドである。CBSスポーツがイングランドの上から4つの部に入っていないクラブと伝えており、2026年1月10日の3回戦で2-1と勝った。Soccer Addictedのアーカイブ(2005-06〜2025-26シーズン)で、プレミアリーグのクラブを3部以下のチームが破った43対戦の1つだ。





